チクル妄想工房

ガムベースの作ったものを載せたり、他人の創作物への感想を書いたりしています。

三題噺「アイマスク、スピード、乱獲」

「円環的幼女姦」




 読み終えた単行本の小説を鞄にしまい、私は目を瞑った。それからしばらく意識を失っていたようだ。次に目を開けたとき、「私は公園の、石造りのベンチに寝転がって空を見ていた。大勢の子供の声が聞こえた」という文章がふいに思い浮かんだ。思い出したといった方が正確かもしれない。

*****

 日和のよい昼下がりにベンチに横になって、耳の奥をくすぐるような少女の黄色い声を聞きながら徐々に鮮明さを失ってゆく意識の中で私は、近い過去にあった、らしい、事件のことを思い出していた。果たして私自身の物語なのか、それとも見聞きした他人の話だったのかわからないけれど、鮮明な映像として記憶に残っていた。私に似てはいるが若干顔立ちの異なる――ように見える男と、たくさんの少年と少女たちだった。その中でもひときわ目を引くのは、フリルの付いた薄桃色のワンピースを身につけた髪の長い綿菓子のような少女――走り回って服の裾を扇情的にはためかせている――私に似た男はトイレに入り――子供たちはかくれんぼを始めた――広場に最後まで残った少女はどこに隠れたものか迷っているふうに見えた。

 円筒形の一人用簡易トイレで小便を済ませて手を洗っていると、鬼ごっこをしていた子供たちが今度はかくれんぼを始めたらしく「もういいかい」「まあだだよ」と聞こえてきて、つられて「もういいよ」と呟きながらトイレを出ると、ここに隠れようとしたのか十歳とわずか程であろう幼い少女が一直線に向かってくる勢いのままこちらの下腹部の辺りに衝突し、跳ね返ってひっくり返りそうになったのをとっさに腕をつかんで支えると、思いついて「ここなら絶対に見つからないよ」と囁きながらそのまま腕を引いて抱き寄せるように個室に引っ張り込んで素早くドアを閉め鍵をかけたところ「おじさんも一緒に遊びたいの?」と少女はこちらを見上げながら多少怯えた小さな声で訊いたので「違うよ」と返し、「ここなら誰にも絶対に見つからないと思ったから」と繰り返したセリフの真意はもちろん少女をこの狭い個室でめちゃめちゃにしてやろうという衝動――用を足すために性器を露出していた直後に、事故とはいえ股間に顔をうずめる真似をした少女の方が悪いのであるという責任転嫁によって肯定された欲望――によるところのものであり、ほんの数十秒前とはうってかわって硬度を増し一個の生物のように脈動するそれからもはや少女に逃れるすべがないのは明らかで、声を上げられる前にポケットのハンカチを少女の口に押し込み「騒ぐと痛いよ」と脅してから「じっとしていればすぐに終わるよ」と優しい声を出して今にもズボンを突き破りそうな狂気はそのままに、まずは少女の柔らかい衣服に手を掛け手触りと匂いを愉しみつつ一枚ずつ取り除いていくと、やがて露わとなった薄っすらと浮かぶ汗で鈍くひかる少女の素肌を前に膨張した下腹部はリズムを一層早めながら痺れる様な淡い快感をまずは己の内側に、そして植物に水が浸透するように徐々に全身に広げ、麻痺していく理性は悲鳴を上げながら解放を待ち望む狂気をもはや押し止めること叶わずに、ベルトを外しジッパーを下げ既に湿りを広げつつあったジーンズとトランクスを下すと、弾けるように飛び出した巨根は外気に触れたその瞬間、臨界に達していた猛毒をもって目の前の少女の長く整った黒髪に顔に膨らみのない胸に洗礼を授け、解放の余韻に小刻みに痙攣する両手が暴れ回る剛棒を放心したように見つめる少女の全身にくまなく白き穢れを塗りたくっている

 眠りに入る寸前に考え事を始めてしまい、目が覚めてしまった。どうやらそれは――トイレでの事件は、随分昔のことだったらしい。私は頻繁に公園に行き少女の姿を眺めるのが好きであったし、遠目からもしっとりした弾力を感じることのできるふくらはぎや、二の腕に、ほんの指先だけでも触れてみたいと思うことはあった。だが決して、些細な欲望であっても実行に移すことはしなかった。声をかけるだけでも保護者に不審がられることを経験的に知っていたので、あいさつも遠慮していたくらいだった。それでも公園に行くことは止めなかった。だからこんな馬鹿げた記憶を持ってしまったのだろうかと不安になった。幻覚が見えるのに近い、生活に支障を生じかねない偽り――偽り?――の記憶を持つ症状が私を襲い始めたのはつい先日――先日?――のことだ。きっかけがあったのかもしれないが、思い出せなかった。思い出すことができれば、以前のようにベンチでの安眠を取り戻せると信じていた。私はもう一度横になり、無理やりにでも眠るためアイマスクと耳栓を付けたが、暴走する記憶は、アイマスクの作り出した暗闇によって何かをよみがえらせたようであった。ポケットの小銭が妙に気になり始め、そうだ小銭に関する話だったのだ、自動販売機の前で何かがあったに違いない、というところまで詳細に思い出した。

 近所の商店が閉まってしまったため少し遠くの自動販売機までビールを買いに出ると販売機の前に小さな先客がいて、小銭を入れたはいいが一番高い列のボタンに背の届かない先客は飛び跳ねながら販売機を平手で叩き続けており、壊れる前に止めさせようと近づこうとしたが彼女の服装が短めのスカートであることに気付いて立ち止まり観察していたところによると飛び上がったあと降下する最中に中身の純白の下着が見えていることがわかって下腹部が膨張を始めたが暗闇なのをいいことに起つがままにさせておき、時間切れで小銭が戻ってくるまでジャンプを続ける少女の下着をその場で熟視していたのだが、大きな音を響かせて戻ってきた小銭を取り出した少女がこちらの気配に気づいて振り返ったので少女の視線が危険な部分に向けられていないのを確認しつつ近づいて、「とどかないの?」と訊くと「うん」と素直に答える少女に手を差し出し、「代わりに買ってあげるよ」と小銭を受け取り販売機に投入しようと百円玉をつまみ上げたときふと思いついてわざと小銭を販売機の下に潜り込ませるように落とし、「ごめん、いま拾うから」と屈みこんで隣に立ってこちらを見下ろす少女のスカートの中を盗み見て、機械の下に手を差し込んで「届かないなあ」と言いながら腕を戻すときにもまたパンツを見て、「もう一度やってみるね」とまたパンツを見る、ということを三回繰り返し、三回目に腕を戻すときに実は一度目に手を入れたときに拾ってずっと手の中に隠していた百円玉を少女の手の届くであろうぎりぎりの距離に置いて、「交代して君が手を入れてみて。腕が細いから取れるかも」と促し少女が四つん這いになって販売機の奥に向かって腕を動かしている様子を背後から観察しパンツを思う存分堪能して、拾い出した百円玉を「あった」と嬉しそうに見せる少女に「ごめんね落としちゃって。さあ貸してよ」と受け取った百円を販売機に投入し少女の望みのジュースのボタンを押して、出てきたジュースを手渡してから「ちょっと待って」と自分の財布から小銭を出して五百ミリリットルのカルピスウォーターを買い、「お金落としちゃったお詫び」と言って困惑気味の少女に無理やり缶を抱えさせて、「ありがとう」と残し去っていく少女の後姿を見送りながら少女が家に帰ってカルピスウォーターを飲む光景を想像して硬化した肉棒をきしませる

 結局ビールを買ったのかどうか曖昧で、行き帰りの道の様子もまったく覚えていなかった。事件の本質的な部分――と何ものかに判断されたらしい場面――だけが残り、その前後はまるで空白だった。特に印象深かった部分だけが残存し周辺の記憶は薄れていく――思い出というものに関してそれは普通の現象だが、周りがまったくの無、まるで鋏で切り取ったようにワンシーンのみが残っているというのは不自然だった。自分の本物の記憶だとは信じ難かった。他の誰かの手によって埋め込まれた、ひとつだけの――いや複数の、色の違うタイルとして記憶の壁に浮き上がった異物だった。剥がそうとしても、モルタルで固められていて剥がれない――埋め込まれて、固められていて――たったいま閃いたひとつの光景――それも、やはり、異物だったが――砂場に両足を埋め、座り込んでいる男の姿――向かい合って同じように足を砂に埋めた少女――抜けないね、抜けないねと重なる二つの声が聞こえた。

「もっと深く掘るの?」と訊くと「そう」と少女は桃色のプラスチックのシャベルで懸命に穴を広げながら答え、少女の前を動くもう一つのシャベルはステンレス製の園芸用で少女がやたらと直径を大きくする穴の進行方向を下方へと修正して少女の満足する深さまで掘り進める役目を果たしていたが、作業を始めてから五分も経たないうちに少女は疲れたのかシャベルの先端で土をいじるばかりになってしまい園芸用シャベルが一人で掘ることになって、作業しつつほぼ仕事を止めたピンクのシャベルの先に目線をやると丁度いい角度で少女の大きめのショートパンツの裾から白い布が覗けることを発見してたまらず膨れ上がった欲望の象徴が掘削を妨害してしまい、勘付かれないように足の置き場を直しつつ掘り進めているとやがて「もういいよ」と少女が言って、できあがったのは直径五十センチ深さ三十センチほどの穴と掘り出した土の山であり、少女は穴に足を差し込んで「おじちゃんも早く」と催促して「わかった」と答え同じ穴に少女のそれよりも倍近くある足を入れ、毛深い脚部を産毛も目につかない滑らかな棒と触れ合う近さに並べて、土の山を崩して二人の計四本の足を埋めて土を叩いて固め、また埋めて固めると簡単には動かせなくなって、残りの土を載せて力を入れて叩いて仕上げをするときに少女が力を入れるため腰を動かした拍子にショートパンツに砂が入るのが見えて、「砂が入ったんじゃない」とさりげなく指先でかき出してやるとくすぐったそうに身をよじらせたので下腹部が熱くなり、少女が「抜けないね」と言ったので「抜けないね」とおうむ返しに答えて「抜けない」という言葉の卑猥なイメージに下腹部が熱くなり、本当は力を入れれば引き抜けるのだがわざと抜けないふりをして足を少しだけ動かし、「すごい、固まってる」と微笑みかけると何がそれほど可笑しいのか少女は声を立てて笑って、十秒ほどしてからこちらを見つめてきた笑いの余韻を残した表情に胸のあたりをかき回されるような感触があったが目を逸らすのも不自然なので紅潮しているかもしれない顔で少女の目を見返すも、少女も視線を動かさないのでますます体温の上がるのを感じ、同じ一つの穴に足を埋めて至近距離で向かい合って身動きの取れない状態にある非倫理的なシチュエーションも相まって気を抜けば終わってしまいそうなほど膨張した狂気が波打ちながら先走って、手持無沙汰になった両手は掴むものを求めるがシャベルの他には少女の手しか見当たらず、背の高い二つの膝の向こうにはそれよりも低くてなだらかな別の膝が並んでおり、さらに辿っていくと少女の二本の脚は一か所に交わっていて、そこに目を留めると想像力が自動的に侵入していこうとするのを抑えることができない

 記憶の中の砂場はこの公園のものに似ていた。当然ながら自分が少女と一緒に脚を埋めて遊んだわけではない――はずだった。ただ鮮明な映像だけが残っているのだった。私は眠るのを諦め、起き上がってベンチに座り直すと、正面右方にある水道で少年が水を飲んでいるのが見えた。その光景に引っかかるものがあり、しばらく少年を観察していたが、何も思い出せなかった。耳の違和感に気が付いて入れっぱなしだった耳栓を取ると、水の落ちる音が聞こえて、そのとき、自分が水を飲む映像にではなく、水に関係する音に記憶を持っていることを見出した。いま聞こえているのは水が落下して叩き付けられる音だが、大切なのは他のもっと小さな、耳を澄ませてみたところで聞こえないような音――そうだ、思い出した――喉を水が流れ落ちる音こそが記憶の正体だった。自分の音であるはずがなく、だとすると間近でなければ聞こえない音だった。少女が水を飲み、男の顔は少女のすぐ近くにあり――空気を通してではなく、何か形のある物質を伝って微かな音と――振動は伝わってきた。

 散歩の途中に立ち寄った公園で用を足したついでに水を飲んでいると背後に気配を感じたので、早めに順番を譲ろうと蛇口を軽く締めて脇に一歩退いたところ、立っていたのは小学生高学年くらいの髪の短いタンクトップの少女であり、ブラジャーをつけていないらしく小さな突起が浮いていて、早くも下半身が反応を始めたため前屈みになって、面白いことを思いついたので踏み出した一歩を戻して蛇口のハンドルに再び手を掛けてひねり、少しの間水を飲むふりをしてから力を入れて固く閉めて立ち去って数歩離れた所から見守っていると思惑通り少女はハンドルを回すのに苦戦していて、三十秒ほど格闘したあと周囲を見渡して前の使用者であり蛇口を開かなくした犯人を探し出したとみえて不平を訴えているらしい視線をこちらに送ってきたので、近づいて「何か用かい」と声をかけると「あなたが使ったあと、蛇口が固くて開かないんですけど」と文句を言い、「ごめんね、いま開けるから待ってて」と答えながら蛇口に手を掛けて力を入れるふりをして、「固く閉めすぎたかな」「開かないぞ」と独り言を言いつつ少女の顔を見るたびに襟の深いタンクトップから除く鎖骨や微かな膨らみの始まり、そして二つの突起に一瞬だけ目線を移して楽しんでいたが、三分ほど経ったころ「本当に開かないんですか。ふざけてるんじゃないんですか」と少女が疑り出したので限界だと判断してハンドルを回して水を出し、「ごめんね固く閉めちゃって」と笑いかけるが少女は警戒しているのかにこりともせず「どいてください」とだけ言い捨てて睨むような目で見据えてきて、やはり高学年になると一筋縄ではいかない、どうしたものかと思案しつつ「わかったよ」と答えてから場所を明け渡す前に少しでも時間を稼ごうと「疲れちゃったからちょっとだけ飲ませて」と水を唇にぶつけたり口に含んだり出したりして飲んでいる真似をしながら横目で少女の表情を伺うが苛立ち以外の感情はいつまで経っても見出せず、もう少女のことは諦めようと最後と思って口に入れた水を飲み込もうとしたとき突如名案が閃き、水を口に含んだままにして蛇口を閉め、ふてくされたような顔の少女にまっすぐ向き直り無表情に努めてじっと少女の目を見つめて、少女がおそらく「なんですか」と言おうと口を母音の「あ」の形に開いたところで素早く飛び掛かって両手で少女の肩をつかみ少女の口に自分の口を重ねて含んでいた水を一気に流し込むと、少女は驚くほどの力で暴漢を押し除けて水を全部吐き出ししばらくむせ返っていたのでその間にもう一度水を口に含み、抗議のためにこちらを向いた少女にもう一度口づけをして水を飲まようとしたところ口を閉じて抵抗したのでタンクトップから浮き出ていたはずの突起を手で探ると「きゃっ」と声を上げ、追い打ちをかけるべく肩をつかんでいた右手を少女の背中に回し左手は乳首に添えたまま回転運動を続けながら少しずつ口に溜めた水を移していくとやがて口の端や鼻から水を垂れ流している少女の目に涙が浮かび、左手を乳首から放して最も神聖な場所に導いた瞬間少女の目がかっと見開いて体が震え出し涙が堰を切ったように溢れ出すと同時に細い喉が動いて、少女を包み込む唇と、背中から少女を抱く右手と秘部に初めての愛情をもたらす左手から、喉をゆっくりと落ちていく水の音と振動を感じる

 少年は水飲み場から立ち去り、公園を出て行った。公園にいるのは私と、私の前方の遠くで鉄棒をしている少女だけだった。少女は残念ながらスカートではなくハーフパンツを穿いていて、パンツが見えることはなかったが、後ろで一つに縛った髪を振り乱しながら絶え間なく前転を続ける姿には、私を魅了するものがあった。少女は軽業師で私が観客で、私がいる限り少女は回り続けるのだった。いやそうではなく、少女は自動人形なのかもしれなかった。私が視線を外しても、観客席から立たない限りは回転をやめることはしないのだった。私がベンチから腰を上げたとたんに人形の運動は止まり、それが舞台の終了のときだった。少女は言葉もなく回り続けた。無言でひたすらに、永遠に、何も言わず――言葉をなくした少女は――そうだ、この場に足りないものにようやく思い当たった。言葉だったのだ。少女が無言で鉄棒を続けるのも、私と少女との間に言葉がないせいだった。言葉を発するのは少女ではなかった。「私だった」と私は言った。「私はあの子に挨拶がしたい。これからベンチを立って、あの子のそばまでいって、鉄棒をやめて直立して私の反応を待っているあの子に――ほら、降りただろう、私が立ち上がれば止めるのさ――『こんにちは。ごきげんいかが』と声をかけようと思う」さらに私は続けた。「いままで嘘をつくことを恐れていた。忘れていたけれど、私の役目は嘘をつくことだったのだから、嘘をつかなければいけなかった。少女に挨拶をしたら、私はきっと何もせずに公園を立ち去ると思う。それが本物の私という人間なのだ」公園を横切って歩きながら、私は話し続けた。「私は記憶や想像から捻り出したあらゆる素材を並べて、順番に揃えていった。句点を打つ暇もなく、記憶と想像とが入り混じった数々のストーリーを思いつくままに、しかし慎重に組んだ。どこまでが記憶――つまり事実で、どこまでが想像か、それは私にしかわからないことだ」気が付くと、私は少女の目の前まで近づいていた。私は歩みを止め、少女に微笑みかけた。少女は黙ったまま私を見上げていた。「こんにちは。ごきげんいかが」少女の視線が私の顔を外れ、下方へと移動した……――その部分に、思い出深い感覚があった――なぜか、起つはずのないものが起って――嘘だ、こんなこと――起つはずがないのに、まさか――……

*****

 私は公園の、石造りのベンチに寝転がって空を見ていた。大勢の子供の声が聞こえた。
私は、私のことをどこからか見ている彼に向かって、いまも私のすぐ近くで――この際だから率直に打ち明けてしまうことにしよう――私の中から私のすべてを見つめている彼に向かって、語り始めた。
 「円筒形の一人用簡易トイレで小便を済ませて手を洗っていると………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………