チクル妄想工房

ガムベースの作ったものを載せたり、他人の創作物への感想を書いたりしています。

アイマス22話素晴らしいじゃないですか

 実を言うと予告を見たときは不安でした、ここにきてクリスマス回とは、何をするつもりだろうと。しかし、アニマスに限ってそんな心配は無用でしたね。今回の「クリスマス」というのは、クリスマス会を企画し、5話のときのように「みんなで集まって楽しい時間を過ごそう」というものでした。なるほど。



 Pが楽屋に「ニューイヤーライブ」なるもののポスター見本を見せにきたときに、クリスマスの話題が上ります。春香さんは言います、去年はクリスマスパーティを開いたので、今年もやりたい。ですが、以前とは春香さんたちの状況がすっかり変わっているわけです。14話や22話以降みんなたくさん仕事が入るようになって、比較にならないくらい忙しくなっています。そのため、クリスマスにみんなで集まるのはどうも厳しそうだと千早に注意されます。
 要するに今回はそういう話と言ってしまえばそういう話で、以前みたいにみんな一緒に楽しく過ごすことが気軽にできる状況ではもはやなくなってしまったことを、春香さんと視聴者が改めて知らされることになります。
 気になる話題「去年のクリスマスパーティー」ですが、アニマスの中には出てきません。春香さんの言うようにPが入社する前の話です。1話が春ごろの話で、アイドルたちが事務所に入ったのがその半年前ですから秋くらいです。クリスマスパーティは知り合ってそれほど経たない時期にやったようですね。転換期となった13話のライブは夏の終わりくらいなので、売れるようになってから数か月しか経っていません。短い間にこれだけ急激に環境が変わってしまったのですから、春香さんが気持ちの切り替えができないのも無理はない。もともと春香さんはみんな仲良くということを大切にしてきた人ですから。みんなで一緒に、というのは春香さんだけの問題であるわけではなく、このアニメに勝手にテーマを設定するとすればそのひとつになるでしょう。
 収録のシーンが終わるまでの場面では、千早がよく喋って自然に笑うようになって、歌に関しても心配は何ひとつない、ってことをもう一度確認することができました。以前も笑うことはあったのですが、どこか寂しさが漂っていました。千早、本当に素敵な笑顔になりましたね。千早の歌をPと春香が並んで見ていますが、春香の眼差しには見守るというだけではない、歌の収録のあとに千早にかけた「どんどんすごくなるよね」とうセリフの通り、美希に向けるような憧れがある気がします。千早の「春香のおかげ」という言葉に対しては、春香さんは「わたしは、ただ……」。千早が何に対して「春香のおかげ」と言ったのか春香さんにもわかっているのですが、だからかもしれませんが、春香さんは「ううん、やっぱり私じゃなくて、プロデューサーさんのおかげだよ。だって、こんな立派なステージに立てるようになったんだし」と返しますが、これは春香さんの本心らしい。千早は、21話のバーで伊織に礼を言ったように、感謝や自分のいろいろな気持ちをいちいち言葉にするよう心がけているのかもしれません。(あと、2人ともPの心配をしていましたが、Pは一度に9人のプロデュースを担当しているんですよね、いつか過労死しますね)。千早の変化はクリスマス会に対してのセリフからも見られて、収録後の「久しぶりの息抜きなんだからみんな喜ぶと思うわ、みんな集まれるといいわね」は春香さんに気を遣ってではあるでしょうが、そういうことを満面の笑顔で言えるようになったのです。いままでは春香さんが千早を見守ることが多かったですが、今話では逆に千早が春香を見守るというこれまでになかった関係が随所に見られます。楽屋で千早と話していると、美希のテレビCMが流れます。春香さんは「美希かっこいいよね、トップアイドルって感じ」、そのあとの美希のインタビュー映像を見ては「美希、すごいよね」。15話の休憩中に「美希はすごいよね、自分の気持ちにまっすぐって言うか、ブレないなーって感心しちゃう」と評価していましたね。千早は春香さんに「そうね、どんどん前へと突き進んでいってる」と答えます。20話21話で殻を破った千早も、元々歌に対する思いは人一倍あっただけに、きっともうブレることはないですね。



 収録のあと春香さんがクリスマスパーティの件でみんなに電話をかけますが、みんな忙しくて都合が付くかどうかわからない。この日もまだ全員が仕事中で、春香さんはおそらくたまたま早く終わったのでしょう。りっちゃんPには「あなたも立派なアイドルなんだから、優先順位を考えなさい」と叱られてしまいます。竜宮小町のところには春香が電話する前にPが同じ相談をしていたということがわかり、Pが自分のことを考えてくれていることに春香はちょっとだけ笑みをこぼします。忙しそうだった美希には電話ではなくメールで連絡しますが、実際のところは全員が仕事中だったわけで、きっとこれから彼女たちの間ではメールでの連絡がメインになるのだろうと、何となくそんな寂しい想像をさせられてしまいました。
 ショーウィンドウに映った自分の顔を見て、「そうそう、アイドルは笑顔を忘れるべからず!」と笑顔を作る春香さん。アイドルというのは春香さんにとって、生き方、彼女の在り方そのもの、そんなところなのでしょうか。「あこがれ」というのはそういうことなんでしょうか。笑顔でなくなっている自分の顔を見て、アイドルであることを自分に確認させるような言動を無意識にしてしまう春香さん。彼女は、アイドルが「人々に何かを届ける存在」であることは理解しています。春香さんはもしかしたら「生き方としてのアイドル」に憧れていたのではないでしょうか。忙しい状況であることを忘れて、クリスマスにみんなで集まろうと最初に提案した春香さんは、「仕事としてのアイドル」に関して少々無自覚ではあった。でも春香さんが小さいころに夢を与えてもらったように、21話で最後に千早と美希が話していたように、ステージで歌って踊ったり、テレビに出たりして、誰かに幸せを与える、いまの春香さんはそういう「生き方」としてアイドルに魅力を感じているのではないかと思います。気づいたんですが、17話でも「アイドルとしてどう見られたいか」という真の質問に「うーん、あたしは……どうなんだろう」と詰まって答えられなかった、というやりとりがあったんですね。13話の春香さんのセリフや21話の千早と美希との会話などと照らしてみてもいいですね。余計な自意識がないことがここからもわかります。他のみんなと比較すると、みんなが最初は何かを「与えられること」「得ること」ばかり期待していたのに対して(他己評価であれ、自己評価であれ、お金であれ、歌うための場であれ。つまるところ、アイドルは他の目的を実現するための「手段」であった)、春香さんは初めから「与えること」をもってアイドルという仕事に臨んでいました(何度目かわからない繰り返しになりますが、春香さんにとっては「目的」そのものだった)。春香さんにとってアイドルというのはまさにそういうもので、誰かと競い合ったり注目されたりすることに意味があるのではない。それで13話のセリフ「いまはお客さんにどう見られるかより、自分たちが何を届けたいかを考えることにしない?[……]ちょっとくらい不格好でも、自分たちができること、会場の隅から隅まで届けようよ」とか、14話で961に対してみんなほど怒りを覚えていなかったこととか、11話などで楽天的って言われてしまったことなどがでてくる。春香さんは、だから、自分の憧れた姿を目指すと同時に、まさにいまそのように振る舞ってもいる。いまのままアイドルの仕事に邁進することが春香さんにとってのアイドルでありましょう。本当にブレないのは春香さんなのかも。ただ今回で「仕事としてのアイドル」としての小さな無自覚さを見せた春香さんは、「生き方としてのアイドル」と「仕事としてのアイドル」との葛藤できっと悩むことになってしまう。今話でも予兆がありました。夜にひとりでダンスレッスンをしていた春香さんにPから、春香さんと美希がミュージカルの主役と準主役に選ばれたという連絡が入ります。ただしどちらが主役でどちらが準主役かは練習の出来次第とのこと。春香さんは重要な仕事をもらえたことだけに気持ちが向いているようですが、当然ながら美希との競い合いになります。それなりに売れてくれば、春香さんの「憧れ」と、アイドルを「仕事」とすれば必ずついて回る様々なこととの間で、板挟みになることは避けられない。とくに次回からの話はおそらく、春香さんがずっと協力してやってきた仲間との競争になるのです、そして美希はきっと躊躇しないでしょう。相手がそんな美希であるから余計に、春香さんはどういった気持ちで臨めばいいのかちょっとわからなくなってしまうのではないでしょうか。
 その翌日、春香さんが事務所に出勤すると、小鳥さん一人のほかは誰もいません。全員が忙しくて出払っていたというよりは、このあとのパーティのシーンのための演出として空っぽにしたのでしょう。細かいことだけど上手いなと思います。Pもいません、Pは仕事っぽいです。春香さんは小鳥さんにミュージカルの出演について、すごいねと褒められますが、「オーディションを取ってきてくれたのは、プロデューサーさんですから」と謙虚です。春香さんは千早にも同じことを言っていましたが、Pが自分たちのために頑張ってくれていることをちゃんと知っているんですね。ミュージカルはニューイヤーライブと時期が重なってしまったということですが、考えたくもないことですが、考えてはいけないことですが、残り話数を考えると、こんな不吉なことは書いても話してもいけないのですが、このニューイヤーライブとやらがアニメ・アイドルマスターのラストを飾ることになるのでしょうね、いや、嘘ですよもちろん、嘘に決まっていますが、アニマスが終わるなんて…………。
 そのあと千早とのツーショット。千早が海外レコーディングに行くという驚くべき情報。ふむ、ラストではみんながそれぞれの仕事のために散り散りになって、千早は海外に、なんか浮かんできます、やめよう。うん。ところで、千早が「私の原点はここにあるから」と言っていましたが、「原点」というのは何なんでしょう。歌なのか、ライブなのか。
 春香さんは「こうやって色々な話をすると、元気出てくるよね」「少し前まで、毎日顔合わせてたのに、最近は日曜日にしか顔を合わせないから、変な感じって言うか」とこぼします。春香さんにとって、みんなと会えないことは本当に寂しいことなんですね。春香さんが弱音を吐いたり、弱みを見せることってあんまりなくて、一回だけ21話で、たぶんあのときは本当に辛かったのでしょう、Pに相談していましたが、それだけだったと思います。アイドル活動に関して、例えば歌ったり踊ったりの練習というのは春香さんにとって大変ではあるけれど苦ではない。11話では頑張りを十分に見せてもらいましたし、大変なこともあるけれど云々は1話ですでに口にしていました。でもここで千早に「寂しい」みたいなことを、わざわざ言う。「クリスマスが楽しみ」という春香さんの言葉に、千早は「ええ」と笑顔で答えます。春香さんはよほど楽しみなのでしょう、二人は共演番組の収録後に楽屋で一度同じやり取りをしています。千早も春香さんの気持ちをちゃんとわかっていて、同じような答え方をしていますね。千早も楽しみなのかもしれませんけれど、それよりも春香さんへの気遣いのほうが大きいように見えます。



 クリスマスパーティに向かう途中、春香さんはケーキを買います。みんなが来るかどうかわからないという理由で、ホールを買うかピースで買うか迷うんですが、春香さんはホールを買います。で、さすが春香さんといったところで、途中でPの財布に穴が開いていたことを思い出し、Pのために財布を買います。パーティは事務所でやるようで、春香さんが事務所に着くと、雪歩と竜宮小町と美希以外のみんながそろっていました。大量のケーキ。みんなは春香さんの誘いに対して「行きたい、けれど忙しい」といった返事だったけれど、みんながパーティで集まることを楽しみにしていて、そして、他のみんなが集まってくれることを楽しみにしていたのだとわかります。仲間と一緒にいることを大切に思うことは誰も変わっていない。ケーキは春香さんの不安と視聴者の不安を一緒に解消してくれるアイテムです、すばらしい。クリスマスは雪歩の誕生日でもあって、雪歩のことが大好きな真はこのことを実は最初からずっと気にしていました。
 それからみんなで楽しげに話をしたり食事をしたりしていたようですが、騒ぐのが好きそうな真美がひとりで窓に落書きをしています。真美は亜美を待っているんですね。おそらくしばらくは他のみんなにまじって騒いでいたのだと思いますが、そろそろ竜宮小町が到着しそうだと思うと窓際に行って、椅子に乗っかって外を眺め始めたのでしょう。竜宮小町が到着したとたんに真美は「きたきたぁ」と椅子から降りて3人を出迎えます。さりげなく亜美と一緒に伊織いじりを始めて、それから二人でいつもの調子ではしゃぎ始めます。今話は春香さんが寂しがってる話だったのですが、考えてみると、一番最初に寂しい思いをしたのは亜美真美なんですよね。9話で竜宮小町のデビューで二人一緒にいられなくなってつまらないと真美は言っていました。「ゲームするのもお店見るのもレッスン行くのも、兄ちゃん弄って遊ぶのも、最近ぜんぶ別々だもん」。響回に次いで微妙だった亜美真美回ですが、ちょっと感動したのは真美に亜美に対する妬みがなかったことで、「真美ももっとちょー売れっ子になって、亜美と一緒に仕事できるようになるんだ!」というのが真美の望み。1話での「あなたにとってアイドルとは?」という質問に二人は、「なんかちょー楽しそうだよね」「うんうん。早くテレビとかもっと出てみたいよね」と答えていました。二人にとってアイドルは「楽しいもの」で、二人で仕事をすることが二人にとっての一番の楽しみ。16話のおまけ配信をたまたま聞いたのですが、二人のこの望みは13話のライブ以降少しずつ実現してきているみたいですね。16話のおまけでも話題にされていた、15話に出てきた「あみまみちゃん」とか、その他にも双子出演の仕事をもらえているのでしょう。一方で他の子たちと会う時間は減ってしまっているわけで、よかったよかった、とするには複雑なところですけれど。
 りっちゃんは「私たちで最後かしら?」と訊いて、春香さんは「いいえ、それが、まだ」と困った顔をします。美希とPが来ていないのですが、Pが美希を迎えに行っているのはわかっているので、二人が来ないかもしれないと心配しているのではない。春香さんはきっとPに早く財布を渡したいと考えているんです。Pと一緒にパーティ、Pのおかげ、と何度も言っていました。そして春香さんはPと一緒にパーティをすること自体も楽しみにしているのだと思います。
 やがて二人が到着します。全員が集まって、亜美真美が顔を見合わせながら「これで」「全員集合だね」と。いい笑顔ですね。全員集まった喜びもやはり二人揃ってこそ本物なんですよね。
 それからりっちゃんとPの、りっちゃんが話しかけるところから始まる「全員が集まると華やかですね」「ごめんな、言いだしっぺなのに、遅れちゃて」「いえいえ」という会話。りっちゃんの気遣いですねえ。一度りっちゃんはPを叱っていて、それでこの会話。脱帽です。こういうのを忘れずに、しかもさりげなく自然に描写してみせるのがアイマスのすごいところじゃないでしょうか。なかなかできるもんじゃないと思います。
 それから響と千早。珍しい組み合わせですが……しかし響であることにとくに必然性はなさそうですが……、「みんなでいることを大切に思う人がいたからだと思う」と千早。春香さんのことでしょう。集まってみればそれが大切な時間だとわかる、けれどそういった時間を積極的に作ろうと思ったのは春香さんだけでした。他の人たちは、アイドルの仕事の忙しさや満足感の中でつい忘れてしまっていたこと。あとは、千早がそのつもりだったかはわかりませんが、Pもです。Pはみんなを本当によく見ていたから、春香さんの提案を実現させることを決めたのでしょう。



 みんなで騒いでいると、社長から美希の「シャイニングアイドル賞 新人部門受賞」の知らせがありました。美希はこれを「ハニーへのクリスマスプレゼント」にすると言います。Pはもちろん大喜びで、「何よりもうれしいプレゼントだよ!」と。アイドルたちが上へ上へとのぼっていくために仕事をしているわけですからね。春香さんはPに渡そうと手に持っていた財布を背に隠してしまいます。かわいそうです(そしてかわいそうなところも可愛い)。美希の受賞はアイドルとして非常に喜ばしいことです。みんなが美希にお祝いの言葉をかけて、春香さんはPに財布を渡すタイミングを逃してしまう。美希のめでたいニュースをぶち壊したくない、ということが一番最初に考えたことだったと思いますので、その場で渡すことはできなかった。でもそのせいで結局この日は渡しそびれてしまうことになるんです。財布を買ったのは春香さんがよく気が付く子だったからで、プレゼントを渡せなかったという問題だけじゃなくて、春香さんにとってはさらに、「気配り」とかそういったアイドル面以外の自分の長所が、「アイドルとしての成功」の前にかすんでしまった、そういった経験ともいえるでしょう。次回への布石ともとれるでしょうが、もし美希の話のあと強引に渡していても、自分のプレゼントは美希ほどPを喜ばせることはできない、もしかしたらみんなを白けさせるかもしれない、という心配もあったかなと思います。誰かと自分とを比べて自分のほうが劣るから行動を控える、というのは春香さんにとってなかったことです。勝ち負けを意識した、と言ってもいいかもしれません。次回から美希との勝負が始まるといったときに、春香さん自身が意識しているかどうかはともかく、気持ちで後れを取ってしまったということにもなりますね。
 みんなと会う時間が減ることについてだけではなく、ここでも、「アイドル」という、自分の憧れであり夢であり、おそらく春香さんにとって生き方そのものであるものが立ちふさがる。アイドルであるということは、アイドルではない日常の自分までもがアイドル活動に侵食されるということで、このことは全員が実感していたはずですが、たびたび思い知らされ、決して解放されることのできないことのようです。逆に、アイドルとしての自分を通してアイドルでない自分までもが変わる、ということももちろんありますけれども。
 プレゼントに関する話に戻りますが、財布が渡せなかったという結果が春香さん自身にどうのしかかってくるか。まずひとつは、お礼ができなかったってことに負い目を感じてしまうということはあるでしょうね。そして次に、6話を思い出してみると、ひとりで空回りするPに春香さんはキャラメルを渡していて、このことに対して20話で「あのときのキャラメル、嬉しかったよ。もう一度みんなの仲間として、やり直そうって素直に思えた。春香には感謝しているんだ」とPに励まされました。それが(春香さんが今回のことでどれだけダメージを受けたかはわかりませんが)今回財布を渡せなかったことで否定されてしまうんです。というのは、財布は普段の仕事についての恩返しであり、春香さんの純粋な好意であって、それが場の状況によって無言の拒絶を受けてしまう。千早のときと違うのは、「誰かを励ますのに遠慮なんかするな」という春香さんを救ったはずの言葉を春香さんが持っていることを前提としていることで、その言葉自体が、その言葉を発した者としてのPによって、さらに「励ますのに遠慮なんかいらない」はずの励ます相手としてのPによっても、拒否されなければならなかったところです。それも、なんの悪意もなしに。Pや仲間たちの作り出した悪意のない拒絶が、Pの励ましの言葉を受けているはずの春香さんに、自身の行動を止めさせることになってしまった。しかし春香さんがプレゼントを渡せなかったことは誰のせいでもなく(まさか美希を逆恨みする考えに春香さんが至るはずもなく)、誰かが責任を負うとすれば「遠慮なんかすることない」と言われていたにもかかわらず遠慮するほかなかった、行為者である春香さん自身しかないんです。春香さんは財布を渡さなかったことで、渡せなかったという結果だけではなくて、自分がそう行動した理由を考えさせられる可能性をもってしまい、それまで見えていなかった自意識、それも「自分の体面」を守ろうとする自意識がいずれ目の前に現れてくるでしょう。いまは春香さんは深く考えていないようですが、何かきっかけがあったとき、例えば美希との競争の中でもいいです、春香さんが自分自身の在り様に目を向けざるを得なくなったとき、財布を渡せなかった経験が春香さんを内側から揺さぶることになりかねない、かもなと思います。



 真は「春香の言った通りになったね」と。5話で春香さんは「来年の私たちってどうなってるのかな」と言っていました。レギュラー番組、ライブ、CD、トップアイドル。トップアイドルかどうかはわかりませんが、だいたい実現しました。「でも、もしそうなったら、みんな揃ってこんな旅行とか、もうできなくなっちゃうのかな」という心配もしていて、その通り、今後は簡単には旅行できないでしょう。クリスマスに旅行をする計画はどちらにしろ立てなかったと思いますが、事務所でのこじんまりとしたクリスマスパーティというのは5話の賑やかな旅行とうまい対比になっていると思います。もうみんなで集まれないのかとしんみりしてしまう二人に、伊織は「忙しくなるのはいいことよ。ファンのみんなと過ごすクリスマスのほうが、アイドルらしいクリスマスじゃない」と元気づけます。5話の会話もこの3人でしたね、役割も同じようでしたし、アイマスはこういう細かいところまで気を配っているのが実に見事。5話で伊織が言った「あの頼りないプロデューサー」のおかげでみんな売れっ子アイドルになって、クリスマスパーティのためにスケジュール調整をしてくれたのも「あの頼りないプロデューサー」だった、というのもいいですね。そしてこの場面の伊織の魅力。5話でも今回でも、ちょっと大人ぶったようなわかったようなことを言ってしまうのが伊織ですが、5話の「なってから考えればいい」を嘘にはしない。伊織は決してみんなでいることをどうでもいいと思っているわけではなくて、5話では布団の中で寂しそうな顔をしていました。そのうえでこの場面でポジティブなことを言えるんですから、伊織はすごい子だと思います。
 このあと春香と千早は一緒に洗い物。二人で台所というと11話を思い浮かべますね。洗い物とはいえ千早が進んで台所に立つというのは、春香さんと話をするためだったとも考えられますが、21話の定例ライブのあと少しずつ自炊を始めたということかもしれませんね。千早は、春香さんのことを気にしていたからでしょう、春香と真と伊織の会話を聞いていたようで、春香さんの「みんなが集まると、賑やかだよね」に対して、一旦は「そうね」と答えますが、それから「でも、水瀬さんの言うとおり、こういう日はファンの人と過ごすべきなのかも」「少しずつ色々なことを変えていくことが、前に進むということなのかもしれないわ」と言います。春香さんが寂しく目を潤ませますが、そこに千早は「でも、変わって欲しくない、って思うものもあるわ」と付け加える。春香さんは嬉しそうに「うん」と頷く。それから「来年も再来年も、こうやってみんなで集まれるといいよね」と春香さん。千早はずいぶん変わりましたね。みんなで集まる中での二人の会話は5話でもあって、今回のこのシーンはそれを意識しているのだと思いますが、窓際でひとり月を眺めていた千早に春香さんが話しかけて……というシチュエーションでした。「ねえ、千早ちゃんは、こんなふうにみんなで旅行したりするの、苦手?」に対して千早は「わからない」と答えていた。それから歌のレッスンがなんだのかんだの喋ったあと、「でも、こうやって静かに波の音を聞くのは嫌いじゃないわね」。そんな感じだった千早が、笑顔で、みんなとの時間を「変わって欲しくない」とまで言えるようになったんですから、何かもう涙出ますね。色々なことを変えていくことが前に進むことで、いつまでも同じ場所に留まってはいられなくて、というのは長い間過去に留まっていた千早だからこそ本音で言える台詞でしょう。でも、変わって欲しくないものはあるとしても、何かが変われば他の何かにも影響が及んでしまうことは、仕方がないことで、そうなっているものです。世界から完璧に孤絶しているのでない限り、まったく変わらないままでいることはできない。何かを「変えていく」もしくは何かが「変わっていく」なかで、「変わって欲しくないもの」があるなら、それが「変わらない」よう努力する必要がある。アニマスは基本的には「変わっていく」「変えていく」物語で、その対象がそれぞれのコンプレックスだったりトラウマだったりしました。本人たちが「変えたい」「変わりたい」と思うこと、そして前へ進むためには「変えなければいけないこと」、そういったものを変えてきて、それによってアイドルとして女の子として成長することで、物語は彼女たちがトップアイドルへと近づくように少しずつ動いていきました。そうした流れのなかにあって、たびたび確認され、今話でも違う形で(ある意味では過去形として)示されたように、全体を通じて変わらなかったものは「仲間との絆」とかそんなようなものです。変わらないどころか強まってきたといえます。これから先も全員出演ライブはあるはずですし、というか間近にニューイヤーライブが控えています。春香さんもそのことは理解しているはずで、千早の言った(嘘です、言ってはいません)ように今話のパーティは、変えてはいけないものは何かということをみんなに改めて認識させてくれたというところに意味があったのかもしれません。また春香さんに関していうと、春香さんの「変えたい」「変えるべき」ことって何だろうな、と思います。春香さんはそれがまだ明確には示されていないのです。アイドルになりたいと思った理由も「憧れ」「夢」。だからこそこんなタイミングで、「変わって欲しくない」ことについて、春香さんの主観から語られることになったのでもありますし。この辺りの問題は次から本格的にやるつもりなのでしょうか、それとも核心は語られないのでしょうか。
 あと社長の手品すごいですね。物語がどうのこうのとは別の意味で細かくて笑った。



 残すところあと数話、寂しいですね。これだけの質の高いアニメが終わってしまうのは寂しい。本当いまこのアニメが一週間で一番の楽しみですので。アニマスは素晴らしいアニメだといえます。ここまで感動したアニメはない。