ノベルゲーム『未来都市』をプレイしました。作者はふりーむの登録者情報によるとS様でいいのでしょうか。
いわゆるSFというやつなのでしょう。環境破壊が進み人々は地上に住めなくなって海底に都市を築いてそこに暮らすようになった、という世界設定。
あっさりした文体でスピーディーに物語が進んでいくので、文章のペースにつられてつい淡々と読み進めてしまいますが、作品世界の設定はかなりしっかりしているんじゃないかなと思います。SFってあんまり読んだことないんですが、このくらい世界が組まれているというのは、それだけでもうなかなかに魅力的じゃありませんか。
ただしその割に、描いている範囲が狭く小さくなってしまったのはもったいなかった。一応「地球の未来はいかに」というところまで書こうとしているみたいなのですが、十分に展開されたとは思えない。
終盤で地球全体にまで物語を展開するなら、そこに至るまでの章でも女の子のプライベートだけじゃなくて、もうちょっと作品世界の色々なものを描いたらよかったのではないでしょうか。終盤における地球規模の問題と女の子たちのプライベートな問題の接続が、説明不足のせいもあって、かなり強引になってしまっている印象を受けました。もしくは、世界の危機に直接結びつけなくても、最後まで女の子のプライベートを通して世界の行く末を描くという方法もあったのではないでしょうか。
終盤近くになると徐々に説明されるのですが、作者さんの設定したであろうテーマは、あくまで僕の印象ですが、納得しやすく、すなわちわかりやすく普遍的な思想であるように思えて、このテーマにこの物語は安直と言えば安直な気がしなくもない。
文体はとてもあっさりしていますが、この作品でしたらこれでいいと思います。描写を薄くしてしまっている面もありましょうが、過剰に心情に訴えない文体は、綺麗な絵とカッコイイ(どう表現していいやら)音楽と相まって、作品の雰囲気をうまく構築していると僕は思います。途中で突然べたべたに描写が濃くなることもなく、最初から最後まで淡々とした語りを貫いていて、好感が持てます。
辛口っぽいですけど、かなり気に入ってます。