チクル妄想工房

サークル「小公園」の仮拠点です。ガムベースの作ったものを載せたり、他人の創作物への感想を書いたりしています。

キリトリ線

キリトリ線』を。
作者は三尺寝様。


マジでスゴいノベルゲームだと思いました。

最初は学園もので、ヒロインを一人一人攻略していく、ノベルゲ(ADV?)ではよくありそうな体裁をとってます。
少し超能力ぽい不思議な雰囲気はなくもないのですが、だいたいノベルゲ的にオーソドックスな雰囲気でお話が進みます。
高校卒業を間近に控えた青少年少女たちの、身の振り方への悩みだとか、非日常的な現象により引き起こされた日常・将来への不安であるとか、まあいろんな悩みがあって、主人公や周りの人たちと助け合ってそれぞれお互いに成長していきましょうという話。
基本的に、彼女ら個人に関するお話です。
女の子の攻略が終わるごとに、スタッフロールのあとにそこまでとは雰囲気の違う話が挿入されて、あれっと思うのですが、全ヒロイン攻略が終わったあとに控えるこのシーンの種明かしが、すごい。

メタな構造の作品は基本的に好きなんですが、これはノベルゲームの構造の核心をつくような特別優れたものに思います。
なぜ主人公は女の子を「攻略」していたのか。なぜ「攻略」したあと「タイトルに戻」って同じ時間を繰り返していたのか。主人公が出会ってきた人たちは何だったのか。
そこらへんのネタばらしがされるわけです。
これは物語の種明かしであると同時に、ノベルゲーム(ADV?)というフォーマットへの言及にもなっている。

発想は『さよならを教えて』に近いでしょうか。かなり似ているでしょうか。
良し悪しを比べるつもりはありませんけれども。
しかしそれでも、こういう発想は見事ですね。思いつくことができたとしても、物語に落とし込むというのは相当な技量がないとできないことでしょう。