チクル妄想工房

サークル「小公園」の仮拠点です。ガムベースの作ったものを載せたり、他人の創作物への感想を書いたりしています。

シュタゲのタイムトラベルと選択肢

 タイムトラベルの根本には、過去の状態に対する依存関係として未来は確定している、っていう考え方があると思うのね。
 シュタゲはある時点の選択によって未来が様々に変化する様子を描いている。これは、現在の状態は過去に依存してすでに確定していた事実である、といっていることになる。できあがった歴史の年表をたどっているということ。
 その一方で、岡部のやったように、誰かの選択によって未来が変わるというのならば、個人の選択は予測できないってことになるわけです。「誰かが選択すること」が実現しているわけですから。
 しかしちょっと考えるとそいつはおかしいんですね。世界のあり方を左右する選択肢を得られるのは、なにも特定の誰かだけじゃなく、世界中の誰のいかなる選択によっても世界は変容する可能性がある。ということはシュタゲのようなタイムトラベルによる過去改変は、タイムトラベラー以外の人間の選択をぜんぶすっ飛ばしている理屈になります。あたかもタイムトラベラー以外の人間は、選ぶ選択肢がすでに決定しているかのように。あ、結論言っちゃいました。
 そういう仕掛けがあるわけだよ。タイムトラベルの出来ない人間は、選択肢を持っていない。ある過去・現在に依存してそれに対応する未来が決定している、という理屈は、人間の選択は予測可能である、ってことを示してます。我々は確かに日々自分が何かを選択していると感じるかもしれないが、実際に選択するのはひとつの選択肢だけです。その選択肢は自分が選択したひとつの道であって誰からも強制されたものではない、どうしてそう断言できましょう。もしそれを選ぶことが初めから確定していたとしたらどうでしょう。選択肢を選択肢として機能させることのできるのは、別の選択肢を選び直す可能性を持った人間だけです。
 そんで、この考え方ですと、時間軸が幾本にも分岐している、というモデルは、「タイムトラベラーが支配する(=時間を行ったり来たりする)時間軸のモデル」でして、もしタイムトラベラーが存在しなければ、時間軸は一本の直線です。すべての時間軸において、あらゆる人がこれから先において与えられるすべての選択肢から選ぶ事項は確定している。その人が向かえるであろう未来は一通りです。