チクル妄想工房

サークル「小公園」の仮拠点です。ガムベースの作ったものを載せたり、他人の創作物への感想を書いたりしています。

23話見なけりゃよかった

 うっわぁ……………………って感じでした。
 救いがない。どうしようもなく救いがない。悲惨すぎる。序盤から不穏な空気は漂ってましたが、まぁ前回の話を引き継いでいるのだろうな、というくらいの感覚だったのですよ。なのに、最後、まさかあんなことになろうとは。前回からのこの流れはあまりにも残酷。さすがにやり過ぎじゃないかと思いました。

 ニューイヤーライブを前にして意気込む春香さん。ですが、765プロアイドルたちは多忙で、第一回の全体練習は5人しか集まりませんでした。千早、雪歩、響、やよい。全体ライブをみんなで練習、というと11話ですね、そのときは竜宮は別でしたけれど。11話では当たり前のようにみんなで集まって、みんなで練習していました。春香さんの思い描いているライブ前の練習風景というのは11話みたいな感じなのでしょう。それが、みんな忙しくなって、23話では全然集まれないほどに。春香さんは「みんな一緒」ということを本当にかけがえのないものだと思っていて、22話で描かれていたのも「春香さんの大切にしているみんな一緒の風景」でした。これをなくしたくないと春香さんは思っている。
 春香さんは、仕事のあとに事務所に戻って一息ついてから家に帰るのを習慣にしているみたいです。22話では演出の意味が強かったかな、と思っていた無人の事務所の風景がここでもでてきて、事務所にいたのは小鳥さん一人だけ。その日は他のアイドルたちは誰も事務所に来なかったということです。春香さんは家が遠いにもかかわらず、いままでも誰もいない事務所にわざわざ立ち寄ってから帰宅していたのでしょうか。寂しそうにココアをすする二人。小鳥さんはデスクに向かって、春香さんはソファに座って。事務所は整理しきれていないファンからの贈り物やら何やらで段ボールの山です。
 Pが帰社して、春香さんは「今日は一回も転ばなかった」というよくわからない報告。「転ばない」という演出は1話と14話の冒頭における対比では意味を持っていましたが、ここでは、もはやこのくらいの奇跡(小鳥談)は会話のきっかけくらいにしかならない。というか、春香さんは何でもいいから平和な話題が欲しかったんでしょうか。まぁ春香さんのおかげでほのぼのした雰囲気になって、3人がまるで親子のように見えてちょっと和みました。今話で和んだのはこの場面だけです。Pは、春香さんのボケを軽く受け流したりはしない。ご褒美と称して、刷りたてのニューイヤーライブのパンフを春香に渡します。こういう些細なことを受け止めてくれるPを見ると、クリスマスに財布を渡しておけばなぁと思わずにはいられませんが、仕方なかったんですかね。「頑張ろうな、春香」とP。「みんなで成功させましょう、プロデューサーさん!」と春香は目を輝かせます。みんなに合同練習の連絡のメールを送るシーンで、春香さんが「みんなの時間を合わせて、合同練習だよ」と言っていて、言い知れない不安に襲われました。さすがアイマス、美希の事件といい、不安をあおるのが上手いですね。すでに胃が痛かったです。

 春香さんは収録後の打ち合わせを断って全体練習に向かいます。ちょっとまずい行動な気がしますが、春香さんの中では仕事の優先順位が決まっていて、全体練習が第一のようですね。しかしスタジオに着くと、集まっていたのは、春香さんを除けば、あずさ、真、雪歩、千早の4人だけ。とくに忙しそうな千早や竜宮のあずさがいるところを見ると、仕事の少ない人たちというわけではなさそう。たまたま都合のついた人たちなのでしょう。参加できなかった人には、練習風景をビデオに撮って渡そうということになりました。そして、寂しそうにため息をつく春香さんを、千早が見ている。何も言わないで誰かを見ているという絵がアイマスには多いですね。春香さんと千早だけかもしれんけど。
 練習が終わって、千早と春香は並んで帰ります。このシーンのショックがもう凄まじくて見ていて胸が痛みました。千早は、春香さんが全体練習のために夕方のラジオ収録を早朝にずらしてもらったことを確認します。打ち合わせを断った件にしろラジオ収録をずらしてもらった件にしろ、22話に続いてアイドルを仕事とすることへの甘さが見え隠れしていますが、ひとまず置いておきまして。春香さんは遠くから事務所に通っていますので、早朝から夜まで仕事をしてから帰り、また早朝に仕事というハードワークになります。11話でも描写がありましたが、春香さんはライブのためならかなり無理をします。そこまでして参加したい全体練習なのに、誰も来ない。千早は立ち止まって考え込んでいたかと思うと、「明日からの海外レコーディングをずらしてもらうよう、プロデューサーにお願いしてみる」「この状態でライブをするのは、私自身が納得できない」と唐突に言い出します。千早の話を不思議そうな顔をして聞いていた春香さんでしたが、千早が話し終えると、平然と、諭すように、「駄目だよ千早ちゃん、行かなきゃ」といつもの調子で言います。千早は「春香?」と驚いた顔をする。千早は春香さんが「みんなで一緒に」ということを大事にしていることをアイドルたちの誰よりも知っていたから、春香さんのことを心配していたんです。練習に参加できないことを千早自身が納得できない、ということも本当でしょうけれど、「延期してもらう」と言わしめたのは、そのうえで春香さんのことが気掛かりだったからでしょう。十中八九「行ってきて」と言うであろうことは予想していたのかもしれませんが、どんな様子で答えるかは気になったと思います。ところが、ひどく落ち込んでいるかに思えた春香さんが、あまりにも平然と答えたので、心配していた千早は肩透かしを食わされた。春香は千早の手を握って、「大丈夫、みんな練習したい気持ちはあるんだし」そして、微笑みながら「でも、ニューイヤーライブの日には帰って来てね」と。「それは、もちろん」と千早は笑顔で答えます。「だったら行ってきて」「うん」「ちょっぴり寂しいけどねー」という二人の会話。歩きはじめる春香さんに千早は少し遅れながら、目を伏せつつ「うん」とつぶやきます。春香さんの様子を見て千早は、春香は大丈夫、心配ない、と安心したのだと思います。ですが、これが運命の分かれ道だった。春香さんはその夜、撮影した練習映像を憂いを帯びた顔で眺めていました。春香さんは無理をしていたんですね。というより、千早が「海外行きを辞める」と言い出すものだから、春香さんは努めて平気なふりをするしかなかった。千早の心配する気持ちが裏目に出てしまった。千早はきっと「自分が納得できない」ことのほうが海外行きを延期する本当の理由なのだと自分で思い込んでいて、だから春香さんに相談してしまったんでしょう。春香さんは仲間がチャンスをふいにするようなことに賛成するわけがないので、行ってきて、と。Pが言ったように、千早は本当に不器用な子なんです。そのあとの一連のセリフから想像するに、春香さんは、千早が自分の心配をしていることは察していたのだと思います。だから、心配を取り払ってやるようにできるだけ明るく振る舞うしかなかった。自分は無理をしていないんだよ、と千早に思わせるために「でも、ニューイヤーライブの日には帰って来てね」と付け加えた。海外行きは春香さんの言うとおり、千早にとって大きなチャンスであって、千早がニューイヤーライブとのことで迷っているなら、笑顔で送り出してあげるのが春香さんの役目で、春香さんは当然ながらそうする。自分が辛くても春香さんはそのように自然な姿を装うことができる。千早とは反対に、こういう場面での春香さんは本当に器用に振る舞いますね。胸のしこりのとれた千早は海外へ飛ぶことに決めて、一方春香さんは、千早まで行ってしまうのか、と寂しい思いをすることになります。22話で自分の寂しい気持ちを打ち明けた、アイドルの仲間たちの中では一番の理解者であった千早が遠くに行ってしまった。22話ではPとともに春香さんのことを見守っていた千早が行ってしまった。春香さんはもう千早に頼ることはできなくなってしまいました。
 千早を失った春香さんですが、簡単にはくじけません。やり方を変えて、数人ずつでもいから、みんなとの時間をなんとか確保しようとする。しかしそれでもなかなか時間が合わない。予定があるため一緒に練習できなくて「ごめんねはるるん」と春香さんに抱きつく真美が死ぬほど可愛くて体がよじれて危うく死ぬところでしたが……ふぅ。次の全体練習では、春香さんが一人スタジオで夜なのに電気もつけず待っていたところへ、りっちゃんから中止の連絡。外は雨。傘を差し歩道橋を歩く春香。この一連の絵は孤独感の演出が過剰ですw
 事務所へ帰ると、Pが電話でニューイヤーライブの打ち合わせをしていました。ライブをなんとかしてよいものにしようと熱意の籠った声で電話を握るPを見て、春香はくじけかけていた自分に気合を入れ直します。

 次の日は真と雪歩との生放送で、放送時間までニューイヤーライブの練習をしようと提案しますが、真に「まずは今日の生放送を重点的にやろうよ」と言われてしまいます。「いまのこの瞬間を頑張ろうよ」。真は5話でも22話でも、みんなで集まれなくなるだろうことを残念だと言っていて、みんなでいたい気持ちは春香さんに負けないくらい強いはずですが、その真でさえ、目の前のことをまずやらなければいけないということを理解して受け止めている。春香さんは、正論であることはわかっていても、完全に納得することができない。雪歩がセンターでバックに春香と真、これは3話と同じ配置ですね。今回は3話とは違って、もっと無理のない自然なやり方で歌うことができます。11話では、みんなに迷惑になる、何度やっても駄目、だから諦める、と言っていた雪歩ですが、「生放送で失敗はできない」「センターの重圧」というプレッシャーにさらされても、立派にやりとげることができるようになった。のですが、ライブの成功に雪歩と真が喜ぶかたわら、春香さんは浮かない顔をしています。ニューイヤーライブに向けて奮闘するPを見て「頑張ろう」と思い直した翌日に、「ライブよりまずは目の前のことを」と言われてしまったのですから春香さんも複雑な気持ちでしょう。生っすか!?収録後、番組の打ち切りが急遽決まったという連絡。全員参加の仕事がなくなってしまったわけですが、他のみんなは、全員でする仕事がなくなることに対してはそれほど残念に思っている様子ではなく、春香さんはここでもみんなとの距離を感じてしまう。「いまできることをやる」は、13話で春香さんが言ったことのはずだった。楽屋で落ち込んでいる春香さんに、りっちゃんが演劇の脚本を渡します。しかし演劇の時間は全体練習の時間と重なってしまっていて、そのことを相談しようとすると「ライブとどっちが重要とかじゃないのよ」と諭されてしまう。演劇の練習中、春香さんは時計を気にしていました。春香さんは休憩中に美希の隣に座って「一緒に頑張ろうね」と言うのですが、美希は「それはイヤなの」「一緒に頑張るって言うのは、ちょっと違うって思うな」と。主役になれるのはひとりだけで、美希はPが取って来てくれたこの仕事でどうしても主役がやりたい。春香さんにはミュージカルの仕事に対して美希のような強い気持ちはありませんでした。みんなとのアイドル業への意識の違いを感じながら、やっと話ができる相手がいると思った矢先、「一緒に頑張るのは違う」と言われてしまった。春香さんはみんなと一緒に頑張れればそれでいいと思っていた。アイドル業について勝ち負けを考えてこなかったのですから、急に競争を強いられても困惑してしまいます。私も負けないよ、なんて言葉は春香さんには言えません。たとえと言ったとしても、春香さんの口から出れば「一緒に頑張ろう」と同義の言葉にしかならない。

 ミュージカルの練習が終わったあと、春香さんは歩道橋を一人で歩いていました。全体練習には間に合わなかったのでしょう。アイドルの仲間たちには、誰も春香さんと思いを共有してくれる人はいない。みんなで頑張れなくても、みんなそれぞれの仕事に満足しているように見える。前回と同じです。千早ならもしかしたらわかってくれたかもしれませんが、千早は春香自身が送り出してしまっていまは海外です。でも、ただひとりPだけはニューイヤーライブに対して真剣に考えてくれている。千早がいないいまでは、春香さんが相談できるのはPしかいません。Pに相談しようと事務所に行くと、Pはいなかった。事務所では社長が一人で掃除をしていて(社長が一人で掃除……)Pは他の子に付き添いかもしれない、と。Pも多忙なのですから、仕方がない。ですが、本当に耐えられなくなって頼りたくなったときに会えないというのは辛いことです。いまの春香さんにはPしかいなくて、でもPは春香さんだけのPではなくて、春香さんだけのことを心配しているわけにはいかない。もちろんPは春香さんの言葉を真剣に聞いてくれるでしょうけれど、自分だけが特別なのではなくて、みんな平等で、みんな頑張っていて、そんな中で、どうも自分だけアイドルというものを勘違いしていたのか、みんながそれぞれ頑張っているようには自分は頑張れない、自分だけ何となく頑張れていないように思えてしまう。春香さんは弱っていて、少しの間だけ親身になって自分の話を聞いてほしいと思う。春香さんは人に頼るのが下手な子で、ここまで誰にも相談しないで一人で悩みを抱え込んできました。P以外には相談できなかったとしても、でもPにもぎりぎりまで相談しようとしなかったわけで。

 「みんなと一緒に」ということばかり求めていた春香さんは、見てるこちらとしては、部活気分なのかなこの子、という印象も若干ありました。ずっと積み上げてきたアイドルたちの「絆」を、アニマスは一旦揺るがしてみせる。「みんな一緒」というのは絶対ではなく、他の仕事があれば犠牲にせざるを得ないこともあり、顧みられないこともあるということでした。少しずつ変わっていくんです。いままでみんなで一緒にいられたのは売れないアイドルだったからであって、売れるようになれば環境は変わっていってしまう。アイドルになりたいという動機を「憧れ」とか「夢」という言葉でしか語れなかった春香さん。アイドルになることが、ライブでお客さんと一つになって盛り上がることが、「憧れ」や「夢」であるならば、売れっ子アイドルである春香さんの「今」は、まさしく彼女が追い求めてきたものであるはずです。春香さんにとってはみんなで楽しくアイドルとして頑張っているいまが理想のときです。言ってしまえば、春香さんは、アイドルとしてこれ以上の何かを本気で望んではいないのではないか、そう思えてしまいます。この部分に関しては美希や千早とはまったくの逆です。春香さんは大好きな765プロのみんなと一緒にアイドルを続けたい、人気が出れば嬉しいし、春香さんが一生懸命頑張っていることは違いないけれど、暇なら暇で忙しければ忙しいでよくて、みんな一緒の日々が続けばそれでいいと思っている部分もある。売れなかろうがトップであろうが「アイドルとして共通している部分」はあるわけで、それこそ春香さんが「アイドル」に求めていたものでしょう。千早ならば「(歌で)幸せを届ける」こと、美希ならば「キラキラ輝く」ことで、でも春香さんにとっての「アイドル」は、いまのところ千早や美希のそれのように明確な言葉として存在しない。「アイドルであることがアイドル」という状態に、きっと春香さん自身が満足している。そうでありながら、忙しくなるにつれて「仕事としてのアイドル」として背負うことも増え、「みんなと一緒に」はどんどん犠牲になっていきます。22話で色々なものが変わってしまうことへの寂しさを思っていた春香さんですが、色々なものが変わり続けるなかでも変わらないであろうものがあることを、あの日、確信していたのだろうと思います。765プロのみんなが楽しそうに騒ぐ姿を見て、お互いに大切な仲間でい続けることだけは決して変わらないと。でも今話で、ライブよりも目の前の個人の仕事を優先するみんなを見て、もしかするとそれすらだんだん失われてしまうのではないかと不安になる。何度もみんなにライブのことを連絡していましたけれど、春香さんは焦っていたんだと思います。ニューイヤーライブに向けて合同練習をしたいという名目での行動でしたが、意識下には、徐々に消えてしまうかもしれない(と春香さんが感じている)765プロの絆を、全員参加のライブを通してどうにか繋ぎとめようとする想いがあったのかもしれません。「絆」が消えてしまうことへの恐れ。この話では春香さんの「絆」というものへの考え方が、徐々にみんなと食い違っていった、のかなと思います。頻繁に確認しなくても「絆」は簡単に消えたりしない、という考えをみんな意識下に持っているとは思う。「集まりたいって気持ちはみんなあるんだし」と言っていたように、春香さんもそう信じている、初めは信じていた。でも、だんだん、みんなの態度が全体練習を軽んじているように見えてきて、全員でできる仕事だった「生っすか!?」も打ち切りになって、美希には一緒に頑張らないとまで言われてしまった。仕事が忙しくなって、一緒に集まれなくなって、みんなお互いを心配し合っているように見えても、仕事の忙しさや満足感の中で、絆はやがて消えてしまうのではないか、そういう不安を春香さんは抱き始めてしまったのではないでしょうか。だからニューイヤーライブに向けて「全員で集まって練習する」ことにこだわり続けたのでしょう。

 舞台の稽古でもいまひとつ振るわない春香さん。気合十分の美希との差は広がるばかりです。美希とは「一緒に頑張ることはできない」のです。いままで仲間と一緒に頑張ってきて、これからも仲間と一緒に頑張りたかった春香さんですが、いまは仲間のいないところでひとりで頑張らなくてはいけない。そんな場所で自分の力のなさを思い知らされてしまいます。それも、これまで支え合ってきた仲間との競争によって。22話でも、美希の「アイドルとしての成功」の前に、春香さんの「アイドル以外の魅力」が退けられてしまった経験をしている。どんな状況にあっても、アイドルとして上へ上へと昇り続けることから逃げることはできない。すぐそばには、ずっと前を走っている美希がいる。春香さんが自信をなくしてしまうのも仕方がない気がします。そのうえいまの春香さんにとって、舞台の稽古の外にも、理解者は多忙なPの他は誰もいないのです。11話では美希と千早が協力してくれましたが、いま春香さんの周りには支え合える仲間はいません。
 そこへPが、差し入れのどらやきを持って登場します。突然訪れたPに、「楽しいです」と嘘をつく春香さん。というより、春香さんがPに相談したかったのは舞台に関する悩みではない。Pは、「昨日事務所に来てくれたんだって」「おれに何か話でもあったのか」と、春香が本当に相談したかった悩みを聞きますよ、という姿勢を見せます。春香さんは、どら焼きを見つめる。
 そういえば、アイマスでは「贈り物」が度々登場しますね。気持ちを形にする、というでしょうか。「贈り物」というのは相手を想う気持ちの象徴なのかな。3話のびわ漬け、こじつけ臭いけど4話の料理(貴音と響のセリフより)、6話のキャラメルとドーナツ、14話や17話のファンレター、20話の絵とCD、Pからみんなへのドーナツ、22話のクリスマスプレゼント、そして渡せなかった財布。23話ではPからのどらやき、これも財布と同じく贈与は失敗します。その他。これらの「贈り物」は形のあるものです。アイドルたちの歌は、千早の言葉を借りれば「幸せを届ける」もので、形のないもの。でも形がある者もないものも、同じ「贈り物」なんですよね。4話で貴音が言っていたように。「贈り物」というのは、あなたのことを考えています、あなたのことが好きです、あなたのことを心配しています……言葉にしなくても想いを伝えることのできる道具として、そして当事者のいないところでも気持ちを通わせることのできる媒介としてあるのでしょう。
 話を戻します。春香さんはPに促されてやっと口を開こうとしますが、空気の読めない美希が乱入して、遮られてしまいます。Pと楽しそうに話す美希を見て、春香さんは顔を曇らせ、俯いてしまう。美希が立ち去ったあとPは続きを聞こうとしますが、春香はPに相談するのをやめてしまいます。22話の財布の件では、春香さんの感謝の気持ちが美希の功績を前にすることで届けられなくなってしまった。アイドルとして賞ももらっていて、自分よりミュージカルに真剣な美希。自分よりよほど優れている美希に、今回も春香とPのコミュニケーションは妨害されてしまった。財布はトラウマに近いものになっているかもしれないですね。自分はどうしようもなく駄目で、駄目な自分の言葉が届かないのは仕方がない、みたいに考えているかもしれない。かもしれない、よくわからないけど。今話は全体的に解釈が難しいけど、美希との練習の場面はとくに。
 舞台のせりが下りっぱなしになっていて、春香さんは奈落に落っこちそうになる。春香さんを助けようとして、かわりにPが転落してしまい、Pは重傷を負ってしまう。春香さんはPが落ちたのは私のせいだと自分を責めるのでしょうか。
 春香さんの「転倒」が怪我に繋がったのは11話の捻挫だけでしたが、今回は比較にならない事故になってしまいましたね。冒頭では「今日は転ばなかった」と嬉しそうに話していたのに。疲れているときの春香さんの転倒は要注意ですね(笑!抱腹絶倒!胃痛!)。